「生かされることを知る」<Emileのコラム47>
マイケル・ジャクソンの映画「This is it!」を観てきた。彼の死によって幻となったロンドン公演のリハーサルドキュメントである。いやはやプロというものがこれほど凄まじく、一切の妥協を許さず舞台を仕上げてゆくものとは知らなかった。大いに心を打たれた。もう一つ、われわれが自然に生かされている事、自然無しには生きてゆくことができないことを歌い上げた主題歌にも感動した。
11月中旬、日本―ハンガリーとの国交140年、国交回復50周年を記念したイベントで始めてブダペストの地を踏んだ、女優の山口智子さんと御一緒できた事も楽しい思い出であるが、旧き良きヨーロッパを思わせる町並みに「This is it!」の歌詞が幾重にも重なって、改めて人と自然のかかわり、そして地球環境のことを考えさせられた。
多くの努力にもかかわらず劣化の速度を速める地球環境、その引き金となっているテクノロジーのかたち。そのテクノロジーが煽る便利で効率的な社会、これと乖離する心豊かな暮らし・・・ 便利で効率的であることは無論決して一方的な悪ではない。悪ではないはずなのに、 何故これが環境劣化を促進するのだろうか? 考えてみてほしい。それは効率化によって生まれた時間や空間をどのように使うかを提案もせずテクノロジーの進化(?)が進んでいる事に他ならないからだと思う。面白い報告がある、人は移動にどれほどの時間を使うのかという論文である。過去50年間の世界中のいろいろな地域・所得の相違がどれほどの影響を与えるのかとても興味があった。ところが、結果はすべて75分というのである。アフリカ、サブサハラの歩く以外に手段を持たない人も、車や飛行機で移動するニューヨークに住むエリートサラリーマンも皆1日の平均移動時間は75分なのである。これは何を意味するのか? 我々は、効率化によって生まれた時間や空間をどのように心豊かに暮らすために使うかを考えず、更なる効率化のためにのみ使っているということである。手を伸ばせば、そこにある心豊かな暮らしには目を向けず、効率化により生まれる金銭的な似非豊かさを追い求め、結果として、時間の速度を早くし、精神的なストレスを増やし、環境の劣化を生み出しているのである。まさに、負のスパイラルを必死で創っているのである。何ともくだらない、報われない努力であるが、そう言うためには、何とかしてソリューションを見つけなければならない。
今年から、この心の豊かさを生み出す暮らし方(ライフスタイル)を観念的ではなく、少しでも論理的にアプローチし、具体的なライフスタイルのイメージをつくらなければと思い始めた。いくつかの調査で、どんなにエコテクノロジーができても基本的なライフスタイルは変わり得ず、地球環境の劣化を止めることがほとんど不可能であることがわかったからである。
2030年の環境制約に人の欲を重ねあわせ、その先に見えてくる「心豊かなライフスタイル」そして、その中で不可欠となる「ものつくりのかたち」を見つけ出そうと言うのだ、どこまでできるか? 12月のエコプロダクツ展でその一部をお話できればと思っている。
2009年11月23日 Emile H. Ishida
このページの最終更新日:2009年11月30日

