LOHASはイノベーションの機会
『テクノロジストの条件−ものづくりが文明をつくる−』(P・F・ドラッカー著、上田惇生編訳、ダイヤモンド社)を読んだ。これはドラッカーの論文の中から技術とそのマネジメントについて編集した本である。その中で、「イノベーションの機会は、産業の内部に四つある。第一が予期せぬこと、第二がギャップ、第三がニーズ、第四が産業構造の変化である。イノベーションの機会は産業の外部にも三つある。すなわち、第五が人口構造の変化、第六が認識の変化、第七が新知識である。これら七つの機会は互いに重複する。それぞれが、それぞれのリスク、むずかしさ、複雑さをともなう。だが、イノベーションのほとんどが、これら七つの機会から生まれている。」と述べられている。特に、第六に挙げられた「認識の変化」に目が留まった。
「認識の変化」とは何であろう。さらに読み進めると、「コップに半分入っているのと半分空であるのとは、量的には同じである。だが、意味は違う。世の中の認識が前者から後者に変わるとき、大きなイノベーションの機会が生まれる。」とある。例えば、米国では健康への関心と不安が高まり、突然あらゆるものが癌、心臓病、ボケの原因に思われ始めたが、コップの半分が空(リスク)であると思い始めたのである。認識が変化したのである。さらに、「コップに半分入っていると見るか半分空だとみるかを規定するものは、事実ではなく時代の空気である。もちろん、それは定量化できない。だが、それは得体の知れないものでも、把握不能なものでもない。きわめて具体的である。明らかにすることができ、確認することができる。そして何よりも、イノベーションの機会として利用することができる。」
近年、ロハスという言葉が急速に日本においても使われ始め、新しいマーケットとして注目を集めている。ロハス(LOHAS:Lifestyles Of Health And Sustainability)とは、通常、人と地球にとって、健康で持続可能なライフスタイルという意味で使われている。この日本社会でロハスが一般的に広まり始めているが、ロハスとは一体何だろうか。どのように位置づければ良いのだろうか。ドラッカーの言葉は、これらの問いにこたえてくれる。戦後、日本人は健康な生活を手に入れることができ、コップに半分入っていると認識していたのが、近年、何らかの要因で日本人の見方が変わりつつあり、コップの半分は空だと見るようになったのではないか。この認識の変化の要因は明らかではないが、少なくともイノベーションの機会として位置づけられよう。
平成18年9月26日
古川 柳蔵
このページの最終更新日:2006年09月26日

