日本人と風呂
日本人はなぜ湯につかる家族風呂に入るようになったのだろうか。風呂のルーツを調べてみた。意外にも、初期の風呂は湯につかるタイプの風呂ではなく、自然の洞窟や岩屋を使った「蒸気浴」であることを知った。蒸気浴は仏教とともに6世紀に大陸から伝わったもので、西日本の各地には初期の蒸し風呂と思われる「石風呂」の跡がたくさん残されている。この石風呂は海沿いにあることが多く、海水や海藻類を上手に使い、治療や予防のために利用されていたと考えられている。
湯につかるという意味で関連する温泉の歴史についても調べた。最古の温泉については、諸説があるが、古事記、日本書紀、風土記、万葉集、枕草子や地域に伝わる言い伝えに温泉の存在の記録が残っている。例えば、聖徳太子、舒明天皇が温泉に行幸した記録があるように、天皇や貴族による利用と地元住民による温泉の利用が推定できる。温泉は古来より治療、癒し、身の清め、あるいは美容目的に利用されていたそうだ。つまり、千年以上も前に現在知られている温泉が持つ効用を既に日本人が知っていたということになる。さらに、宮城県の秋保温泉やその他の東北地方の温泉が古来より西日本地域にまで知られていた。湯で体を洗えば美しくなり、病気も癒えてしまう。温泉は「神の湯」とまで呼ばれるようになっていた。
将来、日本ではエネルギーが高騰し、極めて貴重なものになる。それにともない、湯船にたっぷりのお湯を入れ、ザブーンと入る風呂は贅沢となる。ただ、少しライフスタイルを変えればなんとか乗り越えられるかもしれない。例えば、利用エネルギーを半減し、かつ湯につかる風呂で入浴するためには、湯の量を2分の1に減らすか、風呂に入る回数を2分の1にすればよい。風呂の湯を家庭で再利用することも省エネルギーには欠かせない。贅沢な風呂は、湯が豊富な温泉街で満喫することになるだろう。湯をあまり使用しない蒸気浴が家族風呂として定着する日がくるかもしれない。千年の風呂の歴史と比較すると、現在の湯につかるタイプの家族風呂はわずか100年程度である。日本人の風呂にかかわるライフスタイルを変えるのはそんなに難しくないはずだ。
平成19年9月18日
古川 柳蔵
このページの最終更新日:2007年09月18日

