新しい思想の定着

『森の思想が人類を救う』(梅原猛著)を読み、考え方や思想を多くの人に伝え、定着させるためにはその伝える人の基盤となる思想を理解し、相当な努力をすることが不可欠であることを再認識した。日本が縄文時代に森に囲まれた自然の中で長い時間をかけて築いた「生きとし生けるものはみんな平等であり、同じ生命であるという考え方」と「死んでも必ず再生してくるという、生死の循環の考え方」が日本人の基本的な2つの世界観として考えられているが、この世界観の上に、聖徳太子が仏教を日本に定着させ、最澄と空海が日本の自然崇拝の信仰のある日本の土壌に受け入れられやすい形で仏教をアニミズムに変質させたという。新しい思想を定着させるのに成功したのは、能力の極めて高い人がその背景にある思想を明確に理解し、相当に考え抜いた結果であることは間違いないだろう。

近年、日本の人口は増加し、交通手段や情報ネットワークが構築され、海外の考え方、思想、技術など多くの情報が流入し氾濫している。状況は仏教伝来の過去とは異なるが、なおさら何か新しい考えや思想を日本で定着させるためには、それらを日本の文化に受け入れられやすいように変質させ、工夫に工夫を重ねて定着させる努力が必要であろう。ばらばらの情報や異文化の考え方が流れ込むだけでは人を混乱させるだけで何も定着しないはずだ。サステナブルな社会を実現するために必要な考え方、思想、技術、方法論などは現在のところ氾濫している状態である。果たして、これらの新しい思想は、上記のように日本人の根底にある考え方を考慮した定着のための努力まで、残された時間内にたどり着けるのだろうか。

平成19年11月5日
古川 柳蔵

このページの最終更新日:2007年11月06日

↑ページ先頭へ